作品集『東北画は可能か?』
書籍・プロダクト 企画開発
カイカイキキギャラリーにて新作展覧会も開催。東北芸術⼯科⼤学での三瀬夏之介と鴻崎正武、在学生、卒業生による約12年の制作活動をまとめた1冊。
「東北画は可能か?」は、ともに東北芸術⼯科⼤学の教員でもある⽇本画家・三瀬夏之介と画家・鴻崎正武(※)が2009年に始めたチュートリアルと呼ばれる課外活動です。⼭形を拠点に在学⽣・卒業⽣とともにフィールドワークやリサーチを繰り返し、「東北」をテーマに様々な視点から作品を描き、日本各地で展覧会やイベントを開催してきました。
本書では最新作を含む共同制作作品16点を解説付きで掲載、「12号」と呼ばれる個⼈作品は、活動開始から2022年6⽉までに制作された152点すべてを掲載しています。さらに、教員2名と批評家によるエッセイ、教員による対談や学⽣による座談会も収録されており、約12年の活動を多⾓的に総観できる⼀冊です。
※現女子美術大学特任准教授
Worksの頁では2022年現在からプロジェクトが生まれた当初へと遡るように作品を紹介。集団が成熟し学生が主体的に活動できるようになった2017~2022年、東日本大震災が起こり「東北」を表象すること自体が切実なものとなり葛藤しながらも活動が展開された2011~2017年、首都圏に集中する日本のアートシーンに対する挑戦と熱気にあふれた2009~2011年、という3つのセクションに分けて活動と作品を紹介します。掲載された共同作品すべてに、小金沢智(キュレーター。東北芸術工科大学芸術学部美術科日本画コース専任講師)による作品解説を掲載。「12号」と呼ばれるP12号サイズ(長辺606×短辺455mm)のパネルに描かれた個人製作作品も、活動当初から2022年6月時点で制作された作品すべてを年代順に掲載、「東北」のイメージの多様さだけでなく、時間の経過とともにイメージが変化していく様子も見ることができます。
Documentsの頁では、三瀬夏之介・鴻崎正武による旗揚げ当初の2010年に行われたトークショーの記録と、本書のために新たに撮り直した最新の対談を収録し、活動開始当初と現在との語りの変化を比較できるように構成しました。さらに修了生3人による座談会や文章も掲載し、製作者たちの地域の人との関りや共同制作の様子、震災による意識の変化や葛藤にも迫ります。年表では作品の記録だけでなく、ライブなどのイベントの記録もすべて掲載。多声的な活動の証言を収録。
「東北画は可能か?」について
2009年に三瀬夏之助と鴻崎正武によって立ち上げられた東北芸術工科大学での課外活動。様々な学科の学生が集まり、リサーチやディスカッションを繰り返しながら「東北」をテーマに作品を制作。まるで旅をするかのように日本各地で展覧会を開催し、音楽イベントやトークショー、ワークショップも企画。絵画制作だけにとらわれない、多様な表現が共存する集団へと成長した。2012年、第15回岡本太郎現代芸術賞に入選。主な個展に「東北画は可能か?―地方之国構想博物館―」(東京都美術館、2015年)、「東北画は可能か?―千景万色―」(原爆の図丸木美術館、2022年)、「東北画は可能か?―生々世々―」(カイカイキキギャラリー、2022年)。
主なグループ展に「平成美術:うたかたと瓦礫 1989-2019」(京都市京セラ美術館、2021年)など。
プロフィール
三瀬夏之介
日本画家。1973年奈良県生まれ。京都市立芸術大学大学院卒業。09年にVOCA賞、12年に第5回東山魁夷記念日経日本画大賞特別賞、タカシマヤ美術賞を受賞。09年より東北芸術工科大学芸術学部准教授、現在、同大学教授。日本画の伝統的技法・素材を用いながらアクリル絵具やコラージュ、立体作品など、新たな日本画のジャンルを切り拓く。
鴻崎正武
画家。1972年福島県生まれ。東京藝術大学大学院絵画科後期博士課程修了。2004年第13回青木繁記念大賞展大賞を受賞。09年より東北芸術工科大学芸術学部常勤講師、12年より准教授。現在、女子美術大学特任准教授。代表作「TOUGEN」シリーズは誇張された未来的イメージや、化学・テクノロジーによって内障化された異世界を表現。古今東西にまつわる人間の欲望や快楽の混在する桃源郷を描きだす。
書籍情報
『東北画は可能か?』
発行:カルチュア・コンビニエンス・クラブ
発売:美術出版社
価格:6,300円+税
発売日:2022年7月19日(火)
仕様:172ページ、大型本
ISBN:978-4568105452
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